札幌市にお住まいの皆さん、またはこれから北海道でペットと暮らしたいと考えている皆さん。「殺処分ゼロ」という言葉を耳にしますが、札幌市の実際の状況をご存知でしょうか。
かつては多くの命が失われていましたが、現在は法改正やボランティアの協力により、犬猫の生存率は劇的に向上しています。しかし「施設の定員オーバー」や「多頭飼育崩壊」といった新たな課題も生まれています。
この記事では、札幌市が公開している動物愛護管理行政のデータに基づき、現状の課題と、私たち市民ができる具体的なアクションをわかりやすく解説します。
目次
札幌市のペット殺処分は今どうなっているのか
札幌市のデータ「動物愛護管理行政の現状と札幌市が抱える課題」を見ると、犬と猫で状況が大きく異なることがわかります。少し前のデータですが、参考になれば幸いです。
犬:殺処分は激減し「生かす」方向へ
札幌市における犬の収容数は年々減少しており、殺処分数も大幅に減りました。
平成25年度のデータでは、返還・譲渡率(生存率)は97.1%に達しています。これは、迷子犬を飼い主に返す「返還」と、新しい飼い主を探す「譲渡」が進んだ結果です。
猫:減っているが、依然として厳しい現実
猫も収容数・殺処分数ともに減少傾向にはありますが、犬に比べると殺処分数は決して少なくありません。
さらに見落とされがちなのが「路上での死」です。平成25年度、センターでの殺処分数が764匹だったのに対し、路上で回収された猫の死体数は1,553匹にのぼります。
殺処分される数よりも、交通事故などで人知れず亡くなる猫の方が多いというのが現実です。
殺処分ゼロを目指すほど、現場が苦しくなる理由
「殺処分を減らす」という方針は素晴らしいものですが、現場では新たな問題が発生しています。
収容期間の長期化で、施設が「満員」になりやすい
昔は一定期間を過ぎると処分されていましたが、譲渡を目指す方針に変わりました。
その結果、犬や猫がセンターに滞在する期間が長くなっています。
例えば成猫の場合、平成23年には平均6.6日だった収容期間が、平成26年には21.6日まで伸びています。これにより、施設は常に定員ギリギリか、定員を超えて動物を保管する状態が続いています。
「シェルターメディスン」が必要になる
多くの動物が密集して暮らす施設では、感染症のリスクが高まります。
また、虐待を受けたり手入れされていない状態で保護される動物も多く、そのままでは譲渡が難しいケースもあります。
そのため、先進国や一部の自治体で導入されている「シェルターメディスン(群管理の獣医療)」の考え方を取り入れ、心身の健康管理やトリミングを行うことが、譲渡を増やす鍵となっています。
近隣トラブルと多頭飼育崩壊が、殺処分ゼロを遠ざける
ペットを飼っていない市民にとって、動物は必ずしも「愛すべき存在」とは限りません。
市民の7割はペットを飼っていない
アンケートによると、札幌市民の7割以上はペットを飼っていません。
飼っていない人が困っていることの第1位は「敷地外での排泄物の放置」です。
犬では「フンの放置」「鳴き声」「ノーリード」、猫では「フン尿被害」「野良猫への餌やり」が苦情の上位を占めています。こうしたマナー違反が、地域でのペットへの嫌悪感を生み、最悪の場合は虐待につながる恐れもあります。
多頭飼育崩壊の恐怖
不妊・去勢手術をせずに飼い続け、管理できない数まで増えてしまう「多頭飼育崩壊」が札幌でも起きています。平成25年度には、8件の事例から290頭もの犬猫が引き取られました。
住宅密集地の多い札幌では、悪臭や害虫の発生により近隣住民に多大な迷惑をかけるだけでなく、動物自身も劣悪な環境で病気になったり、近親交配で遺伝疾患を持ったりする悲惨な状況に陥ります。
私たち市民ができること
行政だけでは、すべての命を救うことはできません。私たち一人ひとりの行動が重要です。
1. ルールを守る(登録と注射)
狂犬病予防法では、犬の生涯1回の登録と年1回の狂犬病予防注射が義務ですが、札幌市の注射実施率は約70%にとどまり、3割が未接種です。
万が一の感染症流行を防ぐため、そして「責任ある飼い主」の証として、必ず実施しましょう。
2. 「譲渡」という選択肢を知る
これからペットを迎えたいなら、ペットショップだけでなく、センターやボランティア団体からの「譲渡」を検討してください。
ボランティア団体は、特に手のかかる離乳前の子猫のケアなどで大きな役割を果たしており、多くの命をつないでいます。
3. 終生飼育と不妊・去勢手術
動物愛護管理法でも「終生飼育(死ぬまで飼うこと)」が明記されています。
また、意図しない繁殖を防ぐための不妊・去勢手術は、多頭飼育崩壊を防ぐ唯一の手段です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 札幌市で野良猫を見つけたら、すぐに引き取ってくれますか?
A. すぐに引き取りとは限りません。自活できている成猫の場合や、単に外にいるというだけでは引き取り対象にならないことがあります。まずは動物管理センターへ相談してください。なお、飼い主不明の猫の引き取り数は減少傾向にありますが、まだ多くの猫が収容されています。
Q2. センターにいる動物は汚れていたり病気だったりしませんか?
A. 収容時は手入れ不足や病気の状態であることも多いですが、現在は譲渡に向けて健康管理やトリミング(毛の手入れ)などを行う取り組みが進められています。
Q3. 動物愛護に関わりたいですが、ペットは飼えません。何かできますか?
A. はい、できます。札幌市では「動物愛護推進員」などのボランティア制度があり、普及啓発や収容動物のケア、譲渡支援などで活動しています。また、寄付や正しい知識を広めることも立派な愛護活動です。
札幌の「殺処分ゼロ」はスタートライン
札幌市では、殺処分数の減少という成果が出ている一方で、施設の定員オーバーや多頭飼育崩壊といった新たな課題に直面しています。
「殺処分ゼロ」はゴールではなく、スタートラインです。行政による施設の改善や制度作りはもちろん必要ですが、市民が「マナーを守る」「安易に増やさない」「保護動物を迎える」といった選択をすることが、解決への近道となります。
出所:札幌市 動物愛護管理行政の現状と札幌市が抱える課題
執筆:どうみんライフ