北海道犬の魅力と特徴

北海道犬(ほっかいどうけん)は、日本最北の地・北海道で古くからアイヌ民族の狩猟を助けてきた獣猟犬で、その原始的な強さが色濃く残る日本犬の一種です。
かつて「アイヌ犬」と呼ばれた時代を経て、昭和12年(1937年)12月に国の天然記念物に指定されました。

起源と歴史

北海道の先住民族であるアイヌの人々は、弓矢や槍といった手製の猟具でヒグマやエゾシカを相手にしていましたが、その過酷な環境下では犬の協力が欠かせませんでした。
北海道犬は、銃器が普及する以前の狩猟において、日本唯一の猛獣「ヒグマ」や俊足の「エゾシカ」を追跡し、その優れた獣猟能力を発揮してきた歴史があります。

外観的特徴

  • 耳と被毛:小ぶりで厚みのある立ち耳と、密集した二重構造の被毛を持ち、寒冷・積雪の厳しい気候風土に耐えうる体質が備わっています。
  • 体型:前胸部が逞しく発達し、重心が低く見えることで、他の中型日本犬よりもがっしりとした印象を与えます。

標準サイズ

  • 雄:体高52cm(46〜55cm)
  • 雌:体高49cm(43〜52cm)

※体高=地面から肩までの高さ。
このサイズ感と筋肉質な体躯が、狩猟活動に適したバランスを保っています。

毛色の多様性

北海道犬の毛色は多彩で、赤毛が最も多いものの、白、黒、胡麻、虎毛といったバリエーションも見られます。
近年は特に白毛の割合が増加傾向にあることも注目点です。

性格と気質

獣猟犬としての勇敢さと持久力を持ち合わせつつ、性格面では一般的な日本犬と大きく異なるわけではありません。
飼い主には忠実で落ち着きがあり、家庭犬としても適応する素質を持っています。

名犬「阿久号」

昭和2年生まれの雄・阿久号(淡赤毛)は、千歳系統の名犬として知られ、豊かな骨量と鋼鉄のような堅さを誇りました。
現在の北海道犬の基礎血統として、高く評価され続けています。

保存と系統の統一

かつては渡島系、日高系、阿寒系、厚真系など地域ごとに異なる系統が存在しましたが、今日では系統間の差異が少なくなり、
一つの「北海道犬」として保存会や愛好者による標準維持が進められています。

まとめ

北海道犬は、アイヌ民族の猟犬として鍛えられた原始的な強さと、日本犬らしい忠実さを兼ね備えた貴重な犬種です。
国の天然記念物に指定された後も、公益社団法人日本犬保存会などによる展覧会や保存活動を通じて、その魅力と純血種の維持が図られています。

猛々しい狩猟性能と穏やかな家庭犬としての一面を併せ持つ北海道犬は、今後も大切に受け継がれていくでしょう。

 

参考文献

  • 公益社団法人 日本犬保存会「北海道犬」
  • 天然記念物北海道犬協会「北海道犬について」

 

執筆:どうみんライフ